年金を60歳から繰上げると24%減が一生続く 80歳10か月より長生きすると損
文:koyo
この記事のポイント
- 年金の繰上げは1か月0.4%減で、60歳から受け取ると24%減った額が一生続く
- 60歳開始は、累計受給額で80歳10か月に65歳開始に追い越される
- 一度請求すると取り消せず、障害年金や寡婦年金が受けられなくなる場合がある
年金の繰上げ受給は1か月0.4%減。年収600万円の会社員なら月17.5万円が13.3万円に。累計額で65歳開始に追い越される年齢と、減額以外の6つのデメリット。
年金は原則65歳から受け取りますが、60歳から65歳になるまでの間に、早めて受け取り始めることもできます。これを「繰上げ受給」といいます。早く受け取れる代わりに、1か月早めるごとに年金額が0.4%減り、60歳から受け取ると24%減ったまま一生続きます。
年収600万円で38年働いた会社員の場合、65歳からなら月174,747円の年金が、60歳からだと月132,808円になります。毎月約4.2万円の差が、亡くなるまで続く計算です。
受け取り開始年齢別の年金額
| 受給開始 | 減額率 | 年金(月額) | 65歳開始に追い越される年齢 |
|---|---|---|---|
| 60歳 | -24.0% | 132,808円 | 80歳10か月 |
| 61歳 | -19.2% | 141,196円 | 81歳10か月 |
| 62歳 | -14.4% | 149,584円 | 82歳10か月 |
| 63歳 | -9.6% | 157,972円 | 83歳10か月 |
| 64歳 | -4.8% | 166,359円 | 84歳10か月 |
| 65歳(原則) | — | 174,747円 | — |
昭和37年4月2日以後に生まれた人の減額率です(それより前に生まれた人は1か月0.5%)。年金額は年収600万円・厚生年金38年の概算で、65歳開始なら年209.7万円です。
60歳から受け取ると、80歳10か月で逆転される
60歳から受け取ると、65歳までの5年間で約796.8万円を先に受け取れます。しかしその後は毎年50.3万円ずつ差が縮まり、80歳10か月で累計額が並びます。それより長生きするほど、65歳から受け取ったほうが多くなります。90歳まで生きた場合の差は約461.3万円、95歳なら約713.0万円です。
2024年の簡易生命表では、60歳の男性の平均余命は約24年、女性は約29年です。平均的には84歳・89歳まで生きる計算なので、損益分岐の80歳10か月を超える人のほうが多いと考えられます。
繰上げで失うもの:減額以外のデメリット
- 取り消せない:一度請求すると、後から65歳開始に戻すことはできません。
- 基礎年金と厚生年金は一緒に繰り上がる:繰下げと違い、片方だけを繰り上げることはできません。
- 障害年金が受けられなくなる場合がある:繰上げ後に病気やけがで障害が残っても、原則として障害基礎年金は請求できません。
- 寡婦年金がなくなる:自営業の夫を亡くした妻が60〜65歳に受け取る寡婦年金は、繰上げると受け取れません。
- 失業給付と同時に受け取れない:退職後に雇用保険の基本手当(失業給付)を受けている間、繰り上げた老齢厚生年金は止まります(失業保険はいくら)。
- 働いていると減る:60歳以降も厚生年金に入って働く場合、給与と厚生年金の合計が月65万円を超えると在職老齢年金で厚生年金が減ります。
繰上げを考えてもいいケース
早期退職や病気で60代前半の収入が途絶え、貯蓄を取り崩すと生活が成り立たない場合は、繰上げは現実的な選択肢です。持病があり長生きの見込みが低いと考える人にとっても、早く受け取る意味はあります。
一方、「なんとなく早くもらえるほうが得そう」という理由で繰り上げるのはおすすめしません。60〜65歳の生活費は、退職金や貯蓄、再雇用の給与でつなぎ、年金は65歳から(または繰り下げて)受け取るほうが、長生きしたときの安心につながります。収入がない期間の生活費をどう用意するかは早期退職は得か損かや老後は毎月いくら足りないかで試算しています。
配偶者が年下で加給年金を受け取れる人は、加給年金は繰り上げても65歳からしか支給されない点にも注意してください(加給年金の条件と金額)。
出典・参考にした資料
記事中の金額は、これらの資料にもとづいて当サイトの計算ロジックで算出した概算です。